アドホクラシー: 企業のスピードを高めるマネジメントモデル

By CI&T Team

アドホクラシー: 企業のスピードを高めるマネジメントモデル
Posted on 8月 31, 2020

この記事に含まれる内容:

  • スピードと柔軟性を妨げるマネジメントモデルとは

  • アドホクラシーとは、またそれを導入するには

  • デジタル環境で成功を収めるの企業とその創り方

 

企業の成長を妨げる主な原因は、階層的で官僚的なマネジメントにあると言えます。また、各部署の間に壁があり、それぞれが権限を持ち、別の目的や目標に取り組むことで、情報が分散してしまいます。これがイノベーションに対する障壁となり、結果として顧客の価値創造をも阻害してしまいます。

 

この説はかなり有効で、ある企業でオペレーション、マーケティング、人事の代表者に会議をしてもらったところ、全員が「同じ会社で仕事をしているとは思えない」と感じるほど、考えや方向性に食い違いがあったそうです。それぞれが他部署と必要最低限の関わりしか持っておらず、目指す方向もバラバラでした。

 

CI&Tでは、常にリーダーシップ層と経営層を踏まえた議論を交わし、働き方をアップデートしていますが、数年前までは、上記の例と変わらない状況にありました。当時、私たちはDXを全社的に取り入れようと奮闘しており、アジャイルチーム(消費者のニーズに沿うためのバリューフローに特化した、自律的で多機能なチーム)の構築には成功しましたが、なんとリーダー層が、チームが生み出す成果とイノベーションスピードについていけませんでした。 

 

そして分析の結果、まずリーダー層がそれまで築いてきた指揮統制管理モデルから完全に離れられていないことが問題だと分かりました。

 

指揮を取って管理を行えば、簡単にチームを統括できるので一見便利なのですが、アジャイルにおいては、部署間での壁が出来てしまい、チームの多分野性、実験の機会、自律性が失われてしまいます。これが、原因の一つでした。

 

また、構造的な問題もありました。チーム内で、当社が成功を収めたリーンDXモデルにより設計されたフレームワークによる新しいデジタルマインドセットを持ったリーダー層を、会社側がサポートする準備ができていなかったのです。加えて、各個人の変革、リーダー像の再構築を促進する必要もありました。そのためには、私たちのオペレーション、組織システムの変更が不可欠でした。

 

従来のやり方では、経営トップは会議や電話、報告など非生産的な管理業務にほとんどの時間を費やしていました。その結果、顧客との接点が減っていました。また、それぞれのリーダーが部下チームを持ち、一人で権限と責任を抱え込んでいる状況でした。彼らは、このように付加価値のない業務の中で、意思決定だけは最前線に立たされ、手一杯だったように思います。

 

また、彼らが一番不満に思っていたのは、自己啓発や新製品の開発など、昇進に必要な、創造的な仕事に取り組む時間がないということでした。この時当社は間違いなく、多くの企業で見られるような、不毛な官僚主義となっていたのです。

 

「官僚主義がイノベーションの障壁となるのは、イノベーションには様々な知識やアイデアが必要だからです。独りよがりの経営モデルでは、継続的な流れや革命的なソリューションが出てくることは期待できません。」

ジュリアン・バーキンショー、ジョナス・リダーストラル
Make Your Company Fit For The Future Fast Forward、 スタンフォード大学2017


 

スピードと柔軟性を妨げるマネジメントモデル

上記では、階層的な構造を持つ「官僚主義」について述べました。これは私たちにとっても、イノベーションのスピードを上げようと奮闘する企業にとっても、障壁となります。また、メンバーの能力を開発する上で好ましくないマネジメントモデルが、もう1つあります。「実力主義」です。ここで、これら2つの経営モデルを簡単に見てみましょう。


 

官僚主義

これは、古典的な運営方法です。官僚主義は産業時代に発展したもので、標準的なルールと手順、指揮命令型のマネジメントモデルとヒエラルキーに基づいています。意思決定権は、組織図上で最高の位置にある人にのみ属します。階級が高い人の意見に従う、というものですね。

 

これは多くの企業で自然に構築されがちなモデルであり、当社の場合も同様でした。CI&Tは創業以来、年平均約30%ずつ成長を重ねてきました。最初の10年間は、より多くの従業員雇用に対応するため、新しいガイドライン、複雑なルール、より強固な組織構造の構築に注力していました。

 

しかし、このやり方が固まるにつれ、業務の進みが目に見えて遅くなり、社員がリスクを取ったり、迅速に行動したり、創造的に考えたりすることを躊躇し始めました。つまり、上記でジュリアン氏とジョナス氏が言及しているように、このシステムはイノベーションを阻害するのです。官僚主義は、デジタル環境において、消費者に向け、クリエイティブで迅速な対応をしなければならない業務においては、適当ではありません。

 

しかし、現在の市場において、官僚主義が完全に悪いというわけではありません。リスクが多い業務や企業の法的問題についてなど、リーダーの指示と意思決定を必要とする業務では、非常に有効であり、必要な体制です。

 
 

実力主義

情報化時代では、誰もがより多くの情報にアクセスできるようになり、スキル開発や価値創造の機会が増えたため、企業でも、官僚主義は実力主義に取って代わられつつあります。徐々に個々の専門知識が重要視されるようになり、質の高い意見や知識は、肩書きよりも重要なものとなってきています。今は、階層に知識が勝利する時代とも言えます。

 

例えば、開発やエンジニアリングの専門家がアジャイルチームでデジタル体験を作成するような制作現場では、実力主義がうまく機能します。ここでは、チームリーダー(スクラムマスターなど)は、チームメンバーからの意見や協力を得て、最も理にかなった議論に沿って業務を進めます。これは、根拠と分析結果に基づいて意思決定をする必要がある分野にも非常に適しています。

 

問題は、単なる実力主義では、デジタルが必要とする、迅速なイノベーションを促進すべくテストを行う上で非常に重要な、集団的知性を構築しきれないことです。なぜなら、実力主義は集団ではなく個人のスキルを優先するため、チームメイト間での競争が起き、コラボレーションを阻害してしまうのです。チームの中で一番知能が高い人でも、チーム全体の知能には勝てるというわけではありません。

 

さらに実力主義は、データや分析によって消費者と直接繋がりニーズに応えていくような、素早い対応と柔軟性が求められる分野には適しません。 

 

では、官僚主義と実力主義が新市場のニーズに合わないとしたら、この課題はどのように解決すれば良いのでしょうか。 

 

 

 アドホクラシー:デジタル時代のマネジメントモデル

 

 「アドホクラシーは、スピード感の無い官僚主義への解毒剤である。」 

ジュリアン・バーキンショー、ジョナス・リダーストラル
Make Your Company Fit For The Future Fast Forward、 スタンフォード大学2017 

 

アドホクラシー(adhocracy)という概念は、1970年にアメリカの未来学者アルヴィン・トフラー氏とハイジ・トフラー氏によって考案されたもので、現代において、技術の急速な変化に対応しなければならないチーム組織の形態について説明しています。

 

アドホクラシーは、まず数人のグループが集まり、アイデア創出のためにチームとして一緒にプロジェクトを遂行します。アイデアの創出は、顧客ニーズや新しい市場を分析することにより可能となります。チームメンバーは様々な部門、または同じ部門でも異なる役職の人々を集めてください。重要なのは、全員が何らかの形でその仕事に貢献出来ること、そして興味と信念を持っていることです。意思決定権はメンバー全員が持ちますが、チームの最高権威は、最も専門知識を持っている人でなければなりません。

 

2018年、CI&Tでこのマネジメントモデルを試してみたところ、異なる階級のリーダー層全体がチームとして統合し、協力し合うようになりました。当社では、一顧客に対し3~5人体制で対応に取り組みました。より専門的な視点でプロセスを充実させることに加えて、リーダーが顧客と顔を合わせる時間が増えたので、信頼関係も深まりました。結果、顧客はより多くの専門知識を得ることができ、リーダーはネットワークや仕事の幅を広げることに成功しました。

 

結果として、この少人数チーム制により、リーダーが受けもつ顧客数は増えましたが、上司への報告や従業員への説明に費やす時間が大幅に少なくなりました。

 

「この世の全てを知っている人はどこにもおらず、一定の分野に特化して研究をしてきた人々に、その分野に関する知識で打ち勝つことは、非常に困難です。CI&Tは、集団的知性と人々の能力を全面的に受け入れており、お客様の課題にしっかりと対応することが出来ます。」

マウロ・オリベイラ、CI&T Growth and Innovation代表、書籍『Faster Faster』より

 

 

アドホクラシーモデル

CI&Tにとってアドホクラシーは、社員が自分の意思で顧客を選ぶことができ、プロジェクトへの信念がデータよりも価値を持つ場合において、意味を成します。感情や信念を重んじるべきという考えは、一見リスキーなように見えますが、これは理性を捨てるということではありません。アドホクラシーは決して無秩序なのではなく、直感的な意思決定を支える有効なソースです。つまり、スピード感が重要視される現代において、データや情報に溺れてスピードを落としていてはいけないということです。 

 

 また、CI&Tでは社員の可能性と知性を大切にしており、一人一人の興味や才能、願望や信念に応じて、それに繋がるプロジェクトを選ぶ機会を与えたり、採用したりすることが、最高の結果をもたらすと考えています。そして、これは正解でした。社員が自主的に自分の仕事やプロジェクトを決めると、その後の仕事でも、非常に積極的な態度をとることが分かったのです。やる気と行動力は、何よりも大切です。

 

「人々が権力を模索して行われる議論は苦痛でしかありません。私は全員が仕事に感情移入して議論を行うのが好きです。特定の分野やポジションに本当に興味があるからそれを望むのであって、そのポジションでの昇進のため、というのはいけません。」

セザール・ゴン、CI&T CEO、 書籍『Faster Faster』より

 

また私たちは、新しい顧客の参入や目的の変更に伴い、チームのバランスを調整するため、リーダーをその時の課題、顧客、そしてリーダー本人にとって最も意味のあるチームに異動させます。また、チームとリーダー層の実績に合わせて、明確なルールを作り、チーム全体を統括する体制を整えています。ここでは、社内で行われている業務や、各リーダーが行う業務をパフォーマンスベースで丁寧に分析します。そしてこの調整は、下記のアドホクラシーモデルを支える4つの柱で成り立っています。

 

1.個人開発分析 - リーダーはいつでもフィードバックを要求することができ、異なる役割やチーム間を移動する際に、支援を受けることもできます。

 

2. パフォーマンス分析 - 年間の業績について行われる正式なパフォーマンス分析です。

 

3. ギルド - アジャイル方式より生まれたギルドとは、異なる分野やチームの人々が、共通の関心を持ちながらも、新しい学びを共有し、課題について議論し、知識を向上させるために行う定期的な会議のことです。これらの会議は、分析を深める場であり、質の高い集合的知識を生成することができます。 

 

 4. 機会指向型PDCA - チームにおける基本的なプロジェクト管理手法(Plan-Do-Check-Act)です。これにより、計画を立て、成果を体系的に測定することで、継続的なプロセス改善を維持することができます。

 

しかし、アドホクラシーは、企業のあらゆる分野の問題を解決する魔法のツールではありません。上記で述べたように、どの管理モデルにも適する環境があります。私たちの目標は、新しい管理体制に基づくサイロを作ることではありません。理想は、上記の3つのモデルをうまくミックスすることです。


 

全モデルを組み合わせ、最良のモデルを作り上げる

当社では、それぞれのモデルを必要なところで使い、全員が常に有機的に連携出来るような仕事の枠組みを構築しました。ここで優先すべきことは、コンプライアンス領域のような官僚主義的に働くセクション、開発チームのようなより実力主義的なシステムを持つセクション、そして顧客との直接の関係に特化したチームのようなアドホクラシーによって運営されるセクションの間で、良好なコミュニケーションと知識交換を維持することです。

 

 "経営者の時間と場所の使い方を最適化した今、スピードは大きなメリットです。"
セザール・ゴン、CI&T CEO、 書籍『Faster Faster』より

 

そして私たちは今もこれからも、常に自社にとって、市場にとって、そしてお客様にとって最も意味のある業務形態を模索していきます。

 

最終的に最も重要なのは経営モデルではなく、結果です。おそらく今後も、私たちは別のモデルを組み込み、学びを広げていくことでしょう。現代のように変化を求められる時代には、消費者の生活や社会に変化をもたらすために、可能な限りの価値を提供することが唯一の方法であるべきです。これが私たちの目指すべき道なのです。

 

 

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