より良く、より速く、より多く:デジタル時代におけるリーン【前編】

 

より良く、より速く、より多く:デジタル時代におけるリーン
Posted on 8月 4, 2020

かつて、ビジネスとは予測可能性であった時代がありました。顧客を知り、求められる製品を理解し、予測し、販売を促進し、そして適切に製造して最終的に販売することが目標だった時代です。販売促進と販売が重要な要素となっていました。その後、品質に対する消費者の認識と情報へのアクセスが、次第に状況を変え始めました。製造へのこだわりの時代です。一部の企業は情勢の変化についていくために、品質と短期間の製品開発へ方向を転換しました。

そして今、そうした状況は一変しました。テクノロジーはこの10年間で、私たちの行動を、そしてほとんどの企業にとって「競争」が意味するものを、新しい形に変えたのです。この新しい情勢においては不確実性だけが唯一、確実なものです。 参入障壁は下がり、そして変化のスピードは増しています。

当初、多くの人はこれは新しいビジネスモデルの問題だと考えていました。デジタル関連のビジネスモデルです。しばらくの間は、革新的で、結びつきをもたらすデジタル経験を提供することが最も重要であるかのように見えていました。しかし、非常に優れたアプリさえあれば顧客を満足させることができる時代は終わっています。AmazonのCEOであるジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏の言葉を借りると、「顧客はパーティーの招待客で、私たちはそのホストだと私たちは考えています。顧客体験のあらゆる重要な面を少しずつ改善していくことが、私たちの毎日の業務です」ということになります。

しかし、多くの企業は依然としてデジタル革新に対して時代遅れな考え方に捉われたままです。市場は流動的であることは私たちの全員が知っていることですが、顧客を理解し、本当の結びつきをもたらす独自な体験を設計・提供し、しかも熟考した上で迅速にそれを実現することができる経営モデルのある企業は多くは存在していません。この消費者のこだわりの時代において「遅いということ」が、そうした企業にダメージを与えています。

 

デジタル時代におけるリーンを改めて考える
 

顧客中心かつ革新的であることは、基本的にほとんどの企業が目指している資質です。しかし現実には、多くの企業が製品の供給に苦戦しています。

しかしAmazonやGoogle、スターバックス、または世界的に認知されている多くのブランドのような業界の巨大企業を見ると、正しく理解するための洞察を与えている彼らの経営モデルには共通性があることがわかります。つまり、新しいデジタル経済の中で成功を実現している企業の多くは、組織のDNAの核となる部分に「リーン(Lean)」の原則を内包している、ということです。

リーンについて考える時、トヨタや製造業のことを思いつくでしょうか?もしそうだったとしても、それはあなただけではありません。実際私たちの多くは、製造、そして物理的な世界でのプロセスを最適化することに広く焦点を当てるリーンについての文献を読んだことがあります。問題は、リーンという言葉がコスト削減のための婉曲表現として誤って使われていることです。これは現実からは程遠い考え方なのですが。

基本的に、リーンは

1)顧客にとっての価値と価値創造の流れの識別、

2)その価値を一貫して提供することを保証するための管理システムの構築、そして

3)持続的に改善する方法を探し続ける

という3つの重要な領域で企業をサポートしています。こういった考察は、デジタルの領域においても絶対に不可欠なものです。

いても絶対に不可欠なものです。 そしてほとんどの大規模な組織における複雑さの程度を考えると、リーンの原則が、チームの他部門と連携を取らない仕事のやり方から抜け出し、絶えず改善しながら価値を識別し、それを顧客に提供する手助けとなりうる、ということは容易に理解することができます。

リーンという言葉は、成功した新規事業の一般的な考え方を説明するキーワードになっています。そして例えばアジャイル開発(Agile)や実用可能な最小限の製品(Minimum Viable Product: MVP)、短期間のビルドや測定、学習における使用例に具体的に見ることができます。しかし、非常に大規模な組織にとって、新しい経済の中で自らの優位性を失うことなく、ビジネスを成長させるためにリーンが強力で具体的なヒントにもなっているのは、観察していて特に興味深いというのが私たちの見解です。

 

グローバル・ブランドとリーン・デジタル
 

デジタル革新を推進するためにリーンの原則がどのように使用されているか理解を深めるために、いくつかの世界のトップブランドをより詳しく見てみましょう。

Amazonは創業以来、顧客中心主義の指標となってきました。トヨタと同様、従業員をより高価値のタスクに使用しながら、単純なタスクの自動化を成功させたことがAmazonの成長の大きな要因となっています。「カイゼン(Kaizen)」、つまり継続的な改善もAmazonのビジネス哲学の中心的な原則となっています。またこのような改善は、単なる苦情に対する反応だけではありません。Amazonは、価値を提供する方法の問題点を特定するために自社の事業を積極的に利用し、そこから先を見越してソリューションを作り出しています。

Googleでもまた、その業務プロセスの多くの中核にリーンの原則が組み込まれています。毎年、検索アルゴリズムに推定500〜600件の変更を行う同社においてです。これを適応可能にするためのGoogleの手段の一つが、わずか5日間で検証作業を行う革新的なアプローチであるデザインスプリントです。

スターバックス・コーヒーはリーンの概念に強く影響を受けており、他に類のないコーヒー購入の経験ができ、より効率的な組織を作り出すことを目標とする「リーン思考の副社長」を雇ったほどです。顧客が店舗に足を踏み入れることなくドリンクを注文でき、年間数十億人のコーヒー愛好家の貴重な時間を節約しているだけでなく、最も称賛を受けている小売店用のモバイル向け支払ソリューションも作り出しているスターバックスのアプリに、リーンの概念が作用しているというさらなる証拠を見ることができます。

(続きは1週間後に掲載予定です)